川村信子 マダムブリュレに詰め込まれたアイデアと思い
川村信子の頭にはこの時、ある洋菓子が浮かんでいた。
それは…、
銀座時代、手土産で喜ばれていたバウムクーヘン。
「そうだ。バウムクーヘンやったら機械も残ってるし作れるんちゃう?」
こうして手探りのまま、
バウムクーヘン作りが始まった。
そしてこの時も信子が思い出したのが、あの味だった。
幼い頃、母が作ってくれたホットケーキの、
甘いメイプルシロップとバターの香り。
試行錯誤の末、生まれた商品、
それが後に爆発的な人気を誇る看板商品のバウムクーヘン、
マダムブリュレだった。![]()
信子はこのマダムブリュレに、常識では考えられないアイデアを詰め込んだ。
通常バウムクーヘンは、こんがり焼き目が出来るまで機械で焼きあげる。
だが、
マダムブリュレは、焼き目がつかないようにふっくらと仕上げる。
そのため、普通のバウムクーヘンに見られるような年輪は、
マダムブリュレにはなかった。
これが、
マダムブリュレ特有の、
パサパサではないしっとりとした食感を生んだ。
マダムブリュレではさらに、
バウムクーヘンの表面を焦がしたキャラメルで覆うというアイデアも。
マダムブリュレはこれにより、
外はパリパリという独自の食感も加わり、すぐに大人気に。
デパートのイベントでは、わずか20分で600個を完売!
さらにパッケージを一新すると、
女性から評判を呼び、1日に2000個以上の売り上げに!
それはスイーツの常識を持たない素人同然の川村信子が、
自分の持ちうるアイデアをすべて注ぎ込み成し得た快挙だった。
川村信子
「お母ちゃんの味、私の青春の味、高度成長期の味、
子供時代の憧れの味、もう全てがこの一個に詰まってるんですよ」